イエロー・キッドと乙女とカラス
1896年11月1日『ニューヨーク・ジャーナル』の「イエロー・キッド」です。
いちばん上に「American Humorist, Colored Comic Weekly of the New York Journal」と付録のタイトルが書かれてありますので、これは表紙ですね。女の子とカラスは、この付録のイメージキャラクターで、当時の有名漫画家アーチー・ガンが描いたものです。
上の表紙では、このイメージキャラクターとイエロー・キッドとがなにかやりとりをしています。これまでも、彼らが同じページに描かれていることはありましたが、同じマクファデン通りにいるというわけではありませんでした。ですが今回は、みな同じ時間と空間を共有しています。
イエロー・キッドの寝巻きには「ここなら当たるぞ(Here's where I make a hit)」と書かれてあります。ぱちんこを引いてますね。弾が向かう先はカラスです。イエロー・キッドはなにをしようとしているのか。
画面右下に文章があり、「乙女とカラスとイエロー・キッドのバラード」というタイトルが付されています。ざっと読んでみると、どうやら絵の内容についての物語になっています。
女の子が壁のうえに座っていると、カラスが飛んできて女の子のそばに止まり、続いてイエロー・キッドがアパートから出てくる。カラスは女の子を見つめ、ウィンクするのだけど、イエロー・キッドがぱちんこを撃つとカラスは飛んでいなくなり、残ったふたりが跳ねまわる。だいたいそんなことが書かれてあります。つまり上の絵は、カラスが恋にやぶれる直前の場面、ということでしょうか。
女の子の格好は、明らかに普段着ではないですね。ステージ衣装っぽい。おもしろい帽子だし、タイツをはいてるし。そういえばマクファデン通りには、リッカドンナ・シスターズというショーガール四姉妹がいまして(イエロー・キッドとマクファデン通りのパレード - いたずらフィガロ)、やはりバレリーナの格好をしていました。
『ワールド』のホーガン横丁にもかわいい女の子はいたんですが、『ジャーナル』のマクファデン通りのほうはもっとピンナップ・ガール的というか、セクシーな女の子が多くなりましたね。劇場空間の個性のちがいということでしょう。