いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとお姫さまがようやく会えました

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 1906年7月8日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 ほんと、ようやく会えました。いちばん下のコマで、ニモとお姫さまがついにご対面です。連載開始が1905年10月15日でしたので、およそ9ヶ月の旅でした。せっかく会えたのに、ニモはすぐに目を覚ましてしまいますが。感激のあまり気が動転してしまったのでしょうか。

 

 最初のコマに戻りましょう。お姫さまが王様に「わたしもうニモと会えないんじゃないかしら」と不安を打ち明け、王様は「大丈夫だと思うがね、世界は一日にしてならずだ(It looks quite encouraging to me. This world was not made in a day)」と鷹揚な返答をしています。

 

 ...このコマは、いつの場面なんでしょうね。ニモに会う前か、ニモに会ったあと(ニモが夢から覚めたあと)なのか。いつもならこのタイトルのコマは、他の登場人物たちが「今回はこんな感じでダメだった」と、エピソード全体の骨子をあらかじめ伝えるもので、つまりニモが夢から覚めたあとの場面のことがほとんどですが、今回のケースはちょっとよくわかりません。

 

 次のコマでは、真ん中にフリップがいます。ニモがお姫さまに会う直前、ロケットに乗ってやってきたのでした。じゃまされてはかなわないと、ドクター・ピルがすかさずフリップに近づき「この薬を飲め、ニモと同じくらいハンサムになれるぞ」と薬を手渡します。

 

 すると次の、②のコマで、フリップの顔がおかしなことになってます。ヤバい薬を飲まされましたね。ドクター・ピルは「これでしばらくは安心だ」と言ってますが、わたしはフリップが心配でならないですよ。画面左側にいる大男は「すごい、トランス状態になってる!(That is wonderful. He's going into a trance sure!)」と驚いています。ドクター・ピル、恐ろしい男だ...。

 

 ③のコマでフリップはすでに意識を失っており、家来に抱きかかえられています。家来は「ぐっすり起きてる(He's sound awake)」とおもしろいことを言っています。この夢の世界では、意識を保つ=眠っている、意識がない=起きている、ということなのですね。

 

 ニモが現実世界と夢の世界を往来するように、フリップもいま、どこか別の世界にいるんでしょうかね。また、ニモがいつも夢から覚めてしまうとき、フリップがいまここで意識を失っているように、ニモも動かなくなり、たとえばキャンディに見守られながら体を横たえている、ということなんだろうか。ニモが気を失っているときの眠りの国の様子を見てみたいものです。