いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとお姫さまのキス

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 1906年7月15日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 先週、ニモはようやくお姫さまに謁見できまして、タイトルのコマで家来たちがマイムマイムやって喜んでます(マイムマイムの振り付けは1937年に作られたようですが)。

 

 フリップのほうは、お姫さまに会う直前にドクター・ピルに薬をのまされ昏睡状態になっていましたが、どうやら復活したみたいですね。おじさんの夜明けの番人に会って相談をしています。「ニモがお姫さまに会うつもりなんだ、止めてくれないかな、助けてよおじさん」と、少ししょんぼりした感じですね。

 

 おじさんは「おまえはいっつも厄介ごとを起こしてるな...まあいい、今回だけだぞ」と、かわいい甥を助けずにはいられない様子です。このおじさんは眠りの国を雲散霧消させる力を持った無敵の男ですので、どうやらヤバい展開になりそうです。

 

 ニモのほうは、キャンディとドクター・ピルといっしょにいます。キャンディが「お姫さまはふたりきりでニモと会いたがっていますよ、落ち着いてね」というと、ドクター・ピルは「ほれ、この薬を飲んでいけ、そうすれば大丈夫だから」と、また薬を差し出しています。薬物依存になるぞ...。

 

 フリップと夜明けの番人が馬に乗ってやってきているなか、ニモはお姫さまとお辞儀をしてます。お姫さまがニモのすぐ近くに立つのはこれがはじめてですね。ニモと同じか、ややお姫さまのほうが背が高いかな。ドレスが大きいのでそう見えるのかもしれませんが。

 

 お姫さまは「お会いできてうれしく思います。この世界のすばらしい景色をごらんになれば、喜んでもらえると思いますわ」と挨拶しています。『リトル・ニモ』はここまで、物語のゴールが「ニモがお姫さまと会うこと」に設定されていましたが、このゴールに到達してしまったので、今後このマンガは「眠りの国の観光」を描くものになります。お姫さまの言葉によってスイッチが入りました。

 

 次のコマでふたりはさっそくキスしてます。お姫さまは「わたしに会えてうれしいでしょう」と言ってますね。さすがの自信です。実際ニモもうれしいでしょう。しかし残念なことに、ここでフリップたちがやってきます。夜明けの番人が「目覚めよ!」と叫び、太陽に照らされた世界はニモを残して輪郭線が青くなり、薄れていきます。フリップの「リア充め!」という心の声が聞こえてくるようですね。