いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと竜の口とフリップ

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 1906年8月5日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 なんか、コマの数が少ないですね。5コマしかない。一コマが大きいのはやっぱり大きな竜がいるからでしょうね。大きなものは大きく描きたい。それにいちばん下のコマも、物語のクライマックス感を狙ってか、だいたいいつも大きくて、今回もいちばん大きなコマになっています。

 

 連載初期の頃は、多いときには15コマくらいあって、しかもコマの下にキャプションがついていましたので、ひとつひとつのコマはだいぶ小さかったです。コマの数が多ければそれだけ、「ニモがこうなってこうなって...」と、ニモの行動を詳しく描けるし、キャプションがあれば物語を補足できますが、マッケイはそういうタイプのマンガ家ではなくて、「絵の人」という印象です。

 

 フリップがニモたちの前に現われて、「おれもそれに乗せろ」というので、お姫さまは「なら乗ってもいいですよ」とOKを出します。ニモとお姫さまは竜から降りますが、ニモは「あいつに何が起こるか見てみようよ」と、お姫さまと読者に注意を促しています。

 

 で、フリップが座った直後、竜が口を閉じてしまいます。これは御者の仕業なんでしょうかね。Gulluppo! Bosco bolo nongo soo iongo! とか、Peleppo i betto ee mincetto mieetto とか、ドラゴン語で「口を閉じろ」とかいったのかな。ちなみにこの竜は、最初のコマでお姫さまが話していることによれば、ボスコ(Bosco)という名前らしいです。

 

 ニモが注意を促したにもかかわらず、お姫さまはフリップのことはどうでもいいと思ったのか、ニモをソーダの泉につれていきます。その後ふたりは、ドクター・ピルがあわてて走っていく姿を見たので「先生、どうしたの?」と問いかけると、ドクター・ピルはこういいます、「ボスコの身に何かあったらしい、急がなくては!(Something terrible has happened to Bosco, I must hurry!)」。

 

 ドクター・ピルは、ボスコの口のなかに閉じ込められたフリップを案じているのではなく、ボスコを案じているようです。ということはおそらく、フリップがボスコのなかで暴れているのでしょう。それを見たかった...と思いますが、読者のこどもにはとても見せられないような凄惨なことでもあったんでしょうか。