いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットとダイナマイトの箱

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 1905年5月10日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 ダイナマイトと書かれた箱が大量に積んであるなかで、それらの管理を任されてる人と、タバコを吸ってる人とが取っ組み合いをし、そのうちダイナマイトが爆発するという、一見したところあまり面白みのない(笑)マンガです。

 

 しかし、彼らが話している内容を見てみると、これがだいぶ普通でないマンガであることに気づきます。

 

 最初にしゃべっている、黒いジャケットの人の言葉からしてすでによくわかりません。「ここにある花は、この庭でいちばんかわいらしいよ。花は素敵だね。このピンクと白の花は中国のヒナギクで...」。

 

 つづいて、首にショールを巻いてる男。「彼の庭はたしかにきれいだ。はやく夏が来ないかな、夏が来たら明るい日差しを浴びて...」。うーむ、この人たちはなにを言っているのか。

 

 どうやら彼らにとってここは、美しい花畑のようです。3コマ目でタバコを吹かした人が現われたときに、ショールの男が「おいおい危ないな!」と言ってるのも、ダイナマイトを気にしてのことではなくて、かわいらしい花を気遣っているんでしょう。

 

 その3コマ目以降の発言内容も、ちょっとおかしなものです。「...調子はどうだい? 昨晩のオペラのときにおまえを見かけたな。ところでおまえ...」

 

  「そうだ、おまえどこにいたんだよ! おまえとローズさんたちを引き合わせて、いっしょにご飯でも食べようと思ってたのに。探してたんだぞ...」

 

 「ああ、ちょっと別のところにね。ロンドンの人たちのパーティにいたんだよ」「そうか、悪かったな。こっちは昨日の午後はゴルフだったよ」

 

 「電話でおまえに連絡とって、みんなを招待しようと思ってたんだけど、レースでひとっ走りしてたせいで連絡できなかったよ。キャサリンさん楽しんでただろう...」

 

 「もちろんさ。でも、明日の予定を立てなくちゃならないな。おれが残念に思ってたってこと、彼女にきちんと伝えてくれよ...」

 

 「うわあ! なんてすばらしい夕焼けだろう! これすごいんじゃないか? 画家だったらどんな色でこれを表現するだろう、おお!」

 

 ...というわけで、どうやら彼らは、オペラ、パーティ、ゴルフ、カーレースなどを楽しんで日々を送っている、セレブみたいですね。見た目はただのおっさんですけど(いや別におっさんがセレブでもいいんだけど)。というか、セレブだとして、なんで取っ組み合いをしているのか。ケンカしなくちゃならない要素あった?

 

 最後の、夢オチの言葉のなかにも衝撃的なものがあります。「ストロベリー・ショートケーキのうえにレアビットをのせて食べたらだれだって気が狂うよ」。なんでそんなことになったんだ。それは食べる前にすでに気が狂ってるだろうと思うのですが、それとも...おいしいのそれ?