いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと人魚になったフリップ

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 1906年9月2日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 前回、人魚に海のなかに引きずり込まれていたフリップでしたが、ニモの必死の叫びが功を奏したのか、人魚たちはフリップを脅かすのをやめています。1コマ目、ニモが「彼が溺れないようにしてくれればいいんだ」と、フリップを人魚(merboy)にするよう、人魚に頼んでいます。

 

 このコマのフリップを見ると、フリップは人魚にならずとも溺れる心配はなさそうな感じです。慌ててる雰囲気じゃないですよね。ただフリップは前回、人魚の尾びれをほしがっていましたので、ここはおとなしくしてればおれも人魚になれるかもしれないぞ、と思っていたのかもしれない。

 

 次のコマでフリップは尾びれが水玉模様の人魚になって、「うまく泳げるぞ」と上機嫌のようです。人魚は「上に戻ってサーカスを見ましょう」と言ってます。人魚たちのサーカスでしょうか、それともアクロバット芸人たちもいるんでしょうか。

 

 東屋に戻ると、人魚はニモに「もとに戻れ」と指をさしています。「いつでも来てね」とやさしい言葉をかけられてもいますね。ニモはかわいいからな。もとに戻るということは、ニモは人魚でなくなって、ここから立ち去るということでしょうか。フリップが「これからどうするんだ、浜辺でサーカスを見るのか?」と言ってるのは、もしかしてあいつらまた抜け駆けしようとしてる? という直感があったのでしょう。

 

 4コマ目でニモとお姫さまは人間の姿に戻ります。そして案の定、お姫さまはニモに「さあ行きましょう、フリップはついてこれないわ」と言って、フリップを出し抜こうとしていますね。一方、フリップは人魚から「わたしたち、フリップの芸を見たいわ」と言われると、「おれの芸はすげえぞ」と得意げな顔をしています。

 

 5コマ目は、浜辺がすこし近づいていますので、やはりニモとお姫さまはフリップをおいて陸に上がるつもりですね。ニモは「彼はここを離れられるかなあ」とフリップを案じた発言をしていますが、お姫さまはニモの手を引いてどんどん歩き続け、人魚は「宙返り(flip-flaps)できる?」と曲芸の話をしてフリップを引き止めています。

 

 ニモはフリップに対してやさしいところがありますね。前にもそういうことがありました。お姫さまや他の眠りの国の人々はフリップを厄介なやつとしか見ていませんが、ニモはちょっとちがって、フリップのことを気にかけている。友達になりたいんでしょうか。フリップの疎外感を理解しているのか。

 

 6コマ目、人魚の姿のまま陸に上がってきたフリップは「今度はだまされないからな、またお前たちを見つけ出してやるぞ!」と怒っています。いちばん左の芸人は爆笑しながら「あいつめちゃくちゃ怒ってる(he's hopping mad)」と言ってますね。フリップはぴょんぴょんとホップしながら怒ってるんでしょう。アニメのイメージが浮かびます。

 

 芸人たちが笑うなか、ニモとお姫さまは笑っていません。ニモはフリップをかわいそうに思っているかもしれません。お姫さまは「あんなやつどうでもいいからパパに会いにいきましょう」と言っています。そういえばニモは、王様にはまだ会っていませんでした。王様はどんな人なんでしょうね。