いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと護衛のいる通路

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 1906年9月9日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 海水浴から帰ってきたニモとお姫さまは、ドクター・ピルとキャンディから「王様はカーニバルをなさるおつもりです」と告げられます。というわけで、また着替えですね。ニモとお姫さまがそれぞれ更衣室に入ります。

 

 お姫さまはニモに対し「これからお父様に会いますけれど、フリップは来れない場所ですから安心してください」と伝えてます。どういうことでしょうね。また、ドクター・ピルはニモの世話をする気でいますが、お姫さまは近くの家来に「ドクター・ピルには来てもらわなくていいわ」と言っていて、ドクター・ピルは御役御免ということになりました。これもなんでだろう。

 

 4コマ目と5コマ目はどちらも、中央の人が正面を向いていて、左右から視線を集めているという、同じ構図の絵になっています。そのコマがふたつ左右に並んでいるので、紙面全体のシンメトリーが強調されてます。

 

 ニモはキャンディたちから、やはり「フリップはぜったいに入れないところだから大丈夫」と言われています。「護衛がついてるから」とも言われてますね。ニモはとりあえず「フリップがボクたちのじゃまをしに来ないところなら、どこだってかまわないよ」と答えていますが、なぜフリップが立ち入れないのかはまだわかりません。護衛はこれまでもいましたが、フリップは難なく乱入してきてますからね。

 

 一方お姫さまは、今度はドクター・ピルに直接「あなたは来ちゃダメよ」と告げていて、さらに「ニモはあなたの薬が大嫌いなのよ」と理由も添えています。たしかに以前、ニモは薬のせいで幻覚を見ていたのでは? と思わせるエピソードがありましたし(リトル・ニモと秘密の地下通路 - いたずらフィガロ)、まあ薬物依存はいけませんね。さすがお姫さま。

 

 しかしドクター・ピルは「護衛付きの通路に行ったらニモは目を覚ましてしまいますよ」と食い下がります。護衛付きの通路をニモが見たら、ニモはぜったいにショックを受ける(=目を覚ます)はずだということですね。となると、今度の護衛はこれまでとはちょっとちがうのだろうか、という期待がわきます。

 

 で、いちばん下のコマにくるとトラが何匹も並んでいて、トラたちの間にぎょっとした顔のニモが見えます。手前のトラの存在感にわたしたちもぎょっとしますね。よく見ると、トラたちを鎖でつなぐ半裸の黒人たちもいます。悪いやつらが入ってきたら、この黒人たちはトラをけしかけるのでしょうか。

 

 お姫さまは「お父様はもうちょっと警備をゆるめたらいいのに」と、ガチガチの警備にすこし戸惑っているようです。そのうしろを歩く家来たちは「ニモが目を覚まさないといいけど」「そうだよね」「フリップはぜったい来れないな」と、やはりこのガチガチの警備の通路に関するコメントをしています。

 

 天井からは文字付きの幕が何枚か垂れ下がっています。奥のほうから順に「よい子はこわがる必要なし」「悪い子は」「ここを通れない」「危険、立ち入り禁止」とあります。この文字は、歩いてくるニモたちにも見えるように、幕の両面に書かれているのでしょうかね。ニモも読んでいるのだとするとドキドキしてるでしょう。夢から覚めたコマでニモはしばしば両親に叱られてますから。

 

 ニモの前を歩くキャンディは「全世界のこどもたちがカーニバルに来るよ」と言っています。読者のこどもたちのなかには「自分もカーニバルに行ける!」と純真な気持ちの子もいたでしょうか。あるいは、さすがに新聞マンガの世界に入り込めるとまでは思わずとも、こっそり「自分はよい子かな...トラには食べられたくない」と不安に思う子はいたでしょうね。