いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと近づいてくる象

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 1906年9月23日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 なんといっても象ですね。縦に細長いコマが横に並んでいて、そのそれぞれに大きな象が描かれています。コマが細長いので、象は最初からコマのなかに入りきれておらず、6コマ目では象の両目もコマの枠線で切れています。むしろそれが、象のとてつもない大きさをよく伝えています。

 

 2〜5コマ目はどれもおなじ大きさと形で、またいずれの場合もニモとお姫さまはいちいち画面手前のおなじ場所に配置されています。象がどんどん近づいてくる様子が強調されていますね。マッケイはこの、接近する象の迫力を描きたかったんだろうなと思います。

 

 象は、平らな地面をただ歩いてくるのではなく、少し高いところから階段を下りてきているので、コマの形と相まって、巨大な象が上から覆いかぶさってくる感じがあります。また、階段の白が象の体の暗い色と好対照で、画面がだんだん暗くなっていくのも、象のいや増す存在感の表現に貢献しています。

 

 象といっしょにやってくる象使いの男性は、体格がたくましいのと槍を手にしているのとで、戦士のような雰囲気があり、それに顔に影がかかって目がよく見えないところが、状況の緊張感を高めているように思います。

 

 それにしても、いくらサーカスで見慣れているとはいえ、象の鼻の裏側まで描くとはマッケイさすがですね。ちなみにこれはアフリカゾウですかね。牙が長いし。

 

 物語は...えーと、ニモとお姫さまが、モルフェウス王のところにいく途中でした。これからカーニバルがあるということで、厳重な警備のなかを進んでいるところです。

 

 1コマ目で家来たちが右往左往していて、「急がなくちゃ!」「ジャンボにエサはやったのか?」「ほら急げ!」「遅れるぞ!」などと騒いでます。ニモは旗を手渡されてますね。あと、ニモそんな服だったっけ?

 

 2コマ目ではお姫さまも「すこし遅れてるわ」と、急がなくてはならないことをニモに伝えていますが、ニモはちょっとニコニコしていて、どちらかといえばのんきですね。しかし3コマ目で近づいてくる象に気づき「おお! おおおお!!」と衝撃を受けています。

 

 ニモは怖いのか、「乗りたくないよ」と言うのですが、お姫さまは「やさしい象だから大丈夫よ、早く!」と、ニモをむりやり象に乗せます。5コマ目の、象の鼻を背景に槍の先端が光っているのがよいアクセントですね。これは象使いが象に対し「歩みを止めろ」と合図しているのでしょうか。

 

 結局ニモは象の恐怖に耐えきれず目を覚まします。物語としては、ニモが象にびっくりしただけで、王様のところに急がなくちゃならないのに、ほとんど進展なしでした。まあ今日のマンガは、とにかく象! という感じで、物語内容はほぼどうでもいいのかな。