いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビット10号と M studies について

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 昨日食べたレアビットです。

 

 「レアビット...なの?」と首をかしげる方もいらっしゃると思います。わたしも、妻が台所からこれをもってきたとき、レアビットだとはまったく思わず、なにか鶏肉の料理かな? という第一印象でした。

 

 しかしこれは鶏肉ではなく、バゲットでした。細かく刻んであるんですね。作り方をよく聞いていませんが、たぶん、バゲットをフライパンのうえでころころと転がしつつ、あらかじめ混ぜてあるウスターソースとビールとチーズを、フライパンに投入したのではないか。

 

 スーパーやコンビニなどに、フランスパンをスナックにしたようなお菓子がありますよね。今回のレアビットはそれに近いです。レアビット味のスナック。ぱくぱくといただきました。おいしかったです。

 

 さて今日は、マンガ研究に関するウェブサイトのご紹介です。「M studies - マンガ研究フォーラム:Forum of Comics Studies」というものです。

M studies – マンガ研究フォーラム:Forum of Comics Studies

 

 マンガ研究者の佐々木果さんが中心となって開設されたサイトです。MとはマンガのMですが、じゃあ「マンガ・スタディーズ」でいいじゃん、なぜM? みうら? と思われる方のために、まずは佐々木さんの文章を引用します。

 

名称が Manga studies ではなく、M studies となっているのには、理由があります。詳しくは野田謙介氏の「とあるMの定義と起源」(「ユリイカ」2013年3月臨時増刊号・総特集=世界マンガ大系に掲載)をご参照いただけたらと思いますが、そもそもマンガ(または漫画、またはまんが、または劇画、またはコミック、またはカートゥーン、または・・・)という言葉が何を指し示すかは、研究を始めようとする者が最初に出会う大きな疑問のひとつでしょう。時代や地域、文化、世代、育った環境などが異なると、マンガという語でイメージされるものは人により大きく異なるはずです。本気で考えれば考えるほど、それが何であるかはわからなくなります。
そんな、よくわからないものを研究しているのだ、という意識を常に失わないためにも、 ここではひとまず研究対象を「M」と名づけて、できるだけ広い視野で活動を進めていきたいと考えています。

 

そうなのです。どのような言葉であれ、言葉の意味は人によって、あるいは時代によって変化するものですが、「マンガ」という言葉の厄介なところは、「漫画」とか「まんが」とか異なる表記があり、それぞれの言葉が異なる歴史をもっている、というところなのですね。

 

 まず、人によって、ふだんどの表記を使っているかがちがうと思います。また、状況によって複数の表記を使い分けている方もいるでしょう。その使い分けの線引きも人によって異なり、さらに時代によっても、線引きの仕方はちがう。

 

 たとえば、新聞に掲載されている政治風刺は「漫画」で、少年向けの週刊誌のほうは「マンガ」という感じがする、という人がいるかもしれません。あるいは、昔よく読んでいた頃はみんな「まんが」を使っていて、だからいまでも「まんが」という表記がいちばんしっくりくる、という人もいるかも。

 

 わたし自身は、コマが複数あればさしあたり「マンガ」ということにしています。ただ、これまでブログで一枚絵の「イエロー・キッド」を「マンガ」としていますし、また「四コママンガ」と「一コマ漫画」というふうにいちいち使い分けるのも面倒だなとも思っていて、まあ、いいかげんなものですね(笑)。

 

 言葉の使い方は人それぞれですし、また時代やジャンルごとに、多くの人に使われやすい表記というものもある。「劇画」という言葉は一時期ブームでしたが、いまはほとんど死語です。でも、じゃあ劇画は死んだのかと言われるとそんなことはなく、かつて劇画と呼ばれた作品の表現はいまのマンガに生き残っているし、それがマンガの歴史となっている。「マンガ、漫画、まんが」、さらには「劇画、コミック、カートゥーン...」は、表記や意味内容は微妙に異なるものの、それぞれが重なり溶け合っていて、全体としておなじものを指している気もする。こういうときに「M」の字が使えるわけです。人や時代によって呼び名が異なる対象M、ということですね。

 

 「鳥獣戯画」や「信貴山縁起絵巻」が「マンガ」の祖先だ、と言われると、いや絵巻にコマは並んでないでしょ...と言いたくもなりますが、しかしだからといって、絵巻の伝統と『少年ジャンプ』とをつなぐ脈はこれっぽっちもないのかというと、断言はできないし、これらを総体的に見通せる視点があれば、Mのよりよい理解へとつながるでしょう。「M studies」とはそのようなことをもくろんでいるのではないかと思います。

 

 そんな「M studies」、主なコンテンツはいまのところ「特集」と「資料室」です。「特集」は、昨年11月に行われたフォーラム「マンガのナラトロジー」(於・学習院大学)の発言録になっています。前述の佐々木さん、それに引用文にあった野田謙介さんや、マンガ研究・批評の第一人者である夏目房之介さんなど、すごい顔ぶれですが、なんとちゃっかりわたしも参加しています(宣伝)。

 

 「資料室」のほうは、マンガの論文のアーカイヴを構築中で、現在アクセスできるのは三つの論文です。ひとつは佐々木さんの論考「ストーリー漫画家としての宍戸左行」、それともうひとつは、これまたマンガ研究の第一人者・宮本大人さんの「「漫画」概念の重層化過程 ―近世から近代における―」で、いずれもとても重要な仕事です。そして三つ目はなんとわたしの論文です(宣伝)。このお二方のあとに拙論を紹介するなんて緊張感しかないな。

 

 まずは、佐々木さんや宮本さんの論文、あるいは学習院のフォーラムでの発言録をご覧になってみてはいかがでしょうか。わたしの論文はちょっと長すぎるんですよね。あ、そうだ、そういえば、野田さんの論考が載っている『ユリイカ』には、わたしの小論も載っていたんだった(宣伝)。