いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットとモスキート

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 1905年7月19日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 蚊、ですね。巨大な蚊です。

 

 マッケイで蚊といえば、やはり1912年のアニメーション「蚊はいかに行動するか(How a Mosquito Operates)」を思い浮かべますが(How a Mosquito Operates (1912) Winsor McCay animation - YouTube)、そのアニメーションから7年ほど前に新聞掲載されたのが上のマンガということになります。蚊の造形はマンガもアニメーションもほとんど変わりありませんが、話の内容はだいぶちがっています。

 

 太った男が木陰で横になっています。「あー暑い。ちょっと休もう、くたくただ。こう太ってちゃ鬼ごっこもできないな...って、うわ!」。男はさっそく蚊に気づきました。まあでかいからね。

 

 蚊は「いや、大丈夫さ。鬼ごっこやろうぜ、おれが鬼だ。そら起きろ!」と、男といっしょに鬼ごっこやりたいようです。1コマ目からいきなりすごい展開です。

 

 男は「まてまて、ハンデちょうだいよ、ちょっとうしろに下がってくれ」と、鬼ごっこをやるつもりです。状況を受け入れるのが早すぎる。蚊は「いいぜ、10フィート離れてからスタートだ。おれから逃げられるかな」とノリがいいですね。

 

 3コマ目、笑いながら逃げる男と、「つかまえてやるぜえ〜、ひっひっひ」と追いかける蚊。楽しそうだな。蚊は空中を飛ばずに走ってますが(そういえばこの話のなかで一度も飛んでない)、男の足が遅いのか、次のコマでさっそくつかまりました。「あー、つかまった。これ以上はもうムリだ、暑くって」と、ギブアップですね。しかし蚊は「次はあんたが鬼だ、やろうぜ、ほら」と、なおも鬼ごっこがしたい。

 

 蚊の勧誘に男も根負けしたのか、5コマ目では鬼ごっこがすでに行われています。男は手をのばして「さわった! いま指でさわったぞ! おまえが鬼だ」と言うのですが、蚊は「ダメですぅ〜、さわってません〜」と、逃げながら答えています。なんだよ楽しそうだな!

 

 男は必死に追いかけ、6コマ目で蚊の脚をダイビングキャッチです。「よっしゃあ! 今度こそつかまえた、ああ、疲れたあ〜」。

 

 男が「楽しいけどさ、もうやめにしよう、暑くってかなわんよ」と語るその顔は充実感でいっぱいです。ところが、蚊はしつこいことに「おれが鬼だ、やろうぜ、ほら」と、まだ鬼ごっこがしたいようです。

 

 しかたなく男は「もう一回だけだぞ」と、ふたたび鬼ごっこをはじめています。やさしい男ですね。もうだいぶ走って、いいダイエットになってるんじゃないか。蚊はうれしそうに「ほらほらつかまえちゃうよ〜」と男を追いかけています。この男の人のこと好きなの?

 

 男は次のコマであっさりつかまり、ひざに手をついて「いやあ〜、つかまったな、でもほんとうにもう疲れたよ、風に当たりたい」と話しています。息も絶え絶えなんじゃないかな。蚊は、やはり「さあ、次はあんたの番だ」と、鬼ごっこ続行を希望しています。

 

 で、夢から覚めてみると、ベッドの男のまわりに無数の点がありますね。「蚊はうるさいしレアビット食べたしで、もう最低の夜だったよ」ということで、やはりこの無数の点は蚊のようですね。最低だ、いくつ刺されていることか。蚊は汗をかいてる人に寄ってくると聞いたことがありますが、ベッドの男は夢のなかで暑がっていたので、おそらくじっさいにかなり寝汗をかいているんじゃないでしょうか。最低だ。