いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドと世界一周のおわり

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 1897年5月30日『ニューヨーク・ジャーナル』の「イエロー・キッド」です。

 

 「イエロー・キッド・リターンズ」です。世界一周から帰ってきました。船を降りてくるイエロー・キッドたちが、やたら写実的なひとたちに出迎えられています。画面左下で、帽子をもつ左手を上げているのはニューヨーク市長のウィリアム・ストロング(William Lafayette Strong - Wikipedia, the free encyclopedia)で、一方、画面右下で帽子をもつ右手を上げているのは、大統領のウィリアム・マッキンリーWilliam McKinley - Wikipedia, the free encyclopedia)です。

 

 イエロー・キッドの正面には女性が何人か待ちかまえていて、熱烈歓迎の身ぶりです。イエロー・キッドは、バラの花びらが散らされたタラップを悠然とおりてきていて、あたまには月桂冠をかぶり、大きな荷物を背負って、胸にはメダルをつけています。

 

 寝巻きには「そしてボクとリズは結婚し、いつまでもしあわせに暮らしていくでしょう」と書かれていて、ついに「結婚」の言葉が出ました。うしろを歩くリズは、イエロー・キッドの他の友人とくらべて扱いがまったくちがい(キティ・デュガンやモリー・ブローガンなどは背景の船に小さく描かれています)、ファーストレディーのようですね。

 

 動物たちもイエロー・キッドとともに船を降りています。オウムは「ポリーだけはクラッカーがほしい」と言っていますが、"Polly only wants a cracker" とはオウムに言わせる決まり文句のようです。日本語だと「オタケサンこんにちは」と訳されるようなのですが、オタケサンってなんなんだろう。

 

 黒猫は「猫ももどってきたよ」とすました顔です。ヤギはなにも言わず、かわりにイエロー・キッドの月桂冠をむしゃむしゃ食べてます。船の丸窓から少年が顔をだして「おいミッキー! ヤギが月桂冠をとってるぞ」と叫んでますが、イエロー・キッドは気づいていないようです。

 

 船にはたくさんのこどもたちが乗っていて、前景で歓迎されているイエロー・キッドたちを見つめています。ただひとり、スリッピー・デンプシーだけは、あいかわらずさかさまになっています。「これぞスリッピー・デンプシーの落下でござい」と、どこからどこへ落ちてるのかわかりませんがとにかく落ちています。

 

 その近くでは少年が「ねえ、ジャイアンツは試合に勝った?」と、出迎えの人々に聞いています。いまではジャイアンツといえばサンフランシスコ・ジャイアンツですが、当時はニューヨークの球団でした。野球少年は世界一周中も、地元のチームの動向が気になっていたのでしょう。

 

 船のうえには星条旗がふたつ飾りつけられ、まんなかに「おかえりなさい」と書かれたメッセージボードがあります。「今夜、ドアぴしゃりコンテストが神経衰弱病院のチャリティーで行われます。イエロー・キッドは審判で、そのあと、大ニューヨーク第一市長の候補者になる予定です」。うーん、「ドアぴしゃりコンテスト(a door slammin contest)」ってなんなんだとか、どうして神経衰弱病院なんだとか、ニューヨーク市長が出迎えているなかで次期市長の立候補者が表明されているのなんでなのとか、いろいろわかりません。そのうち調べよう。

 

 さて、イエロー・キッドの世界一周が終わりましたが、じつは「イエロー・キッド」のマンガ自体が終わるのもそう先のことではありません。このブログでこのまま紹介をつづけていって、たぶんお盆までもたないんじゃないかな。そろそろ「イエロー・キッド」にかわるマンガを見つけておかないとなあ。