いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとドクター・ピルのかばん

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 1907年8月18日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 「ドクター・ピルだ!」「まあ、ほんと! ドクター!」。ひさびさのドクター・ピル登場です。全体的に青白いコスチュームですね。お姫さまが「こんにちは、ドクター」と挨拶し、ドクターも「ご無事でなによりです」と再会をよろこんでいます。

 

 ただ、フリップはドクターのことが好きではなさそうです。「おれはあいつに目を向けられるのもいやだね」と、だいぶ嫌ってます。キャンディが「ドクターはいい人だよ」といってますが、はたしてフリップの機嫌はなおるのか。

 

 さて、前回、フリップに太陽を呼ばれてすこし懲りたジャングル・インプは、今回ドクターと初対面です。さっそく3コマ目でドクターのかばんをこっそりゲットしようとしてますね。周囲では「おれはあいつの見た目が好きじゃないんだ」「でもとてもすごい人だよ、ほんとに」とか、「お友だちも元気ですか」「ええとっても」とか、それぞれ話をしていて、ジャングル・インプの行動には気づいていません。

 

 ジャングル・インプはまんまとドクターのかばんを盗み取り、4コマ目の左端でかばんをあさっています。ドクターは、視線の向きとしてはジャングル・インプのいたずらに気づきそうなものですが、あいだにフリップがいるのでそちらに気をとられています。

 

 フリップは「あいつをどっかにつれていけよ、おれにステッキでぶっ叩かれる前にさ」とドクターに聞こえるような声で暴言を吐き、キャンディに「ダメだよフリップ!」とたしなめられてます。ドクターも「おまえ、前にも会ったな」と、さすがにちょっと不機嫌になりましたね。

 

 お姫さまは、これらすべてのことに無関心です(笑)。「行きましょう、ニモ!」と、ニモをつれていこうとしています。お姫さまが動けば自然と他の人々も動くわけで、5コマ目ではジャングル・インプ以外のキャラがみな右のほうに寄っています。

 

 フリップとドクターの険悪ムードはつづきます。「その指さしをやめねえんならおまえの鼻をステッキで突いてやるぞ」「なんと、こいつもいっしょの旅なのですか」。お姫さまは「そうなのよドクター」と、ふたりの調停に入ろうとしてますね。えらいですね。ニモもすこしはがんばればいいのですが。

 

 お姫さまのとりなしもあって、ドクターはフリップをお姫さまの友人として認めたようです。しかし、「ここではぜったいにきちんとふるまわなければダメだぞ」と釘をさしていますね。フリップは無言です。

 

 お姫さまはキャンディに「フリップのことをドクターに教えてあげてちょうだい」と、ふたりがけんかをしないための手を講じています。フリップが太陽を呼べることを教えてあげて、という意味かな。ドクターそれ知らないのかな。一方、ジャングル・インプはまだみんなに無視されています。現状、いちばん目をつけていなくてはならない人物のはずですが...。

 

 ジャングル・インプは、ドクターのかばんを開けて、なにかを口にしようとしてますね。食べれそうだと思ったんでしょう。しかしおそらくそれは、かつてニモも口にした、幻覚症状を引き起こす薬なんじゃないだろうか(リトル・ニモと秘密の地下通路 - いたずらフィガロ)。危険ですね。

 

 ジャングル・インプのいたずらにいち早く気がついたのは、やはり教育係筆頭のフリップでした。「あっ!」と声をあげた瞬間、インプがかばんを落とし、なかの薬がころころとちらばってしまいます。

 

 それでもドクターは、キャンディに「ドクター、フリップは危険です、あいつは夜明けの番人の甥なんですよ」と伝えられていたところで、まだインプに気づいていない。お姫さまも「みんな! 歓迎会がはじまるわよ!」と、インプが見えていない。

 

 8コマ目でも同様です。「あれ、わしの薬かばんはどこだ?」「来てちょうだい、ニモ! ドクターのことはいいから!」。まるで、お姫さまとキャンディとドクター・ピルには、最初からジャングル・インプのことが見えていないんじゃないか...とさえ思えます。あるいは見えてはいるが路傍の石のような、とるにたらない存在ということなのか...。

 

 ニモは、わずかに、インプを懲らしめようとするフリップに気づいていそうな感じがします。画面の左を向いていますので。しゃべってほしいですね、ニモがインプをどう思っているのか。