いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとクリスタルの間

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 1907年11月10日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 ニモとフリップとインプの三人は、洞窟内でダイヤモンドの女王に出会い、彼女につれられて新しい洞窟に入ってきました。しかも1コマ目ですでに出口が見えています。

 

 女王は「ああ、プリンセスはあなたを思って涙を流しておいでですよ。クリスタルの間にむかいなさい、王国の兵隊たちに会えるから。かれらもあなたたちを探しているのよ」とニモたちに話しています。

 

 兵隊たちが探してると聞くと、フリップは砲撃された恐怖が頭をよぎったのでしょうか、思わず「おれたち軍艦と戦ってたんだぞ」と答えています。しかし選択の余地はありません。一行は、画面の向こう側に見える明るい部屋へと歩いていきます。

 

 「ようやく帰ってこれたみたいだな」「お腹すいたよ、なにか食べたいな」「おれもだよ。のども乾いたしな...」。みんな安心しているようですね。

 

 そんな会話をしながら歩いていると、3コマ目、フリップが「ここ、すべりやすいな」と、つるつるの床に気づきます。ダイヤモンドの飛び石につづき、クリスタルの間もすべりやすい。ニモが「この床は、歩いたほうがいいのかな、それともすべっていけるようにつくられてるの?」と言うほどにすべりやすい。

 

 「紙やすりでもあればな、そしたら...」「...足を紙やすりでこするのにね! それかゴム長靴があるといいのに」と、フリップとニモが意気投合しつつ困惑しています。インプは...靴をはいているのかな。かれも足下が不安そうです。

 

 で、5コマ目、案の定ニモがいまにも転ぶというところです。「おれの手をそうやってつかむんじゃねえよ! おれも転ぶだろ」「転んじゃう! つかまえてて!」

 

 フリップとインプはニモの手をにぎって、ニモがなんとか転ばないようにつかまえていますが、次のコマでみんな転んでしまいます。「どけて! つぶされちゃうよ!」「こいつ(this Zulu)がどけたらおれもどいてやるよ!」と、三人は団子になってやかましくしてますね。ダイヤモンドの女王はかれらを助けてあげればいいのに。それとも女王は読者といっしょにかれらを見て笑っているのかしら。

 

 ところで、4・5コマ目と6コマ目の境界線が微妙に右上がりであること、みなさんはお気づきになりましたでしょうか。これは、もしかしたら床のすべりやすさ、かれらの足下の不安定さを読者に体感してもらうために、マッケイがわざと斜めに引いたのかな。なんか気持ち悪いですよね。コマのなかに描かれている大きな柱が垂直な分だけ、よけいに斜めの線が気持ち悪いです。