いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットとドイツ語

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 1906年1月23日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 このマンガの内容は単純で、男が「おかしいな、私のひげがないじゃないか」と、あちこち探してみるけど見つからない、という話です。細かいセリフはちがいますが、男は基本的にずっと同じことをしゃべっています。

 

 今回注目したいのは、セリフの随所に見られるドイツ語です。やたらドイツ語が多い。最初のふきだしがすでに怪しくて、Vere is my peard, my viskers? と書いてあるんですが、これは Where is my beard, my whiskers? のドイツ語訛りを表してます。

 

 2コマ目には Es ist nicht (It is not) と、ドイツ語そのものが出てきました。その後も Ich habe es nicht (I do not have it) とか、Wie kann es möglich sein! (How can it be possible!) とか、あちこちにドイツ語が登場します。

 

 こういうドイツ語まじりのマンガは、20世紀初頭アメリカでは珍しいものではありませんでした。ドイツからの移民が19世紀後半からたくさんいましたので、新聞メディアはドイツ語フレンドリーだったのです。ドイツ語新聞もありました。

 

 19世紀末には「カッツェンジャマー・キッズ」(Katzenjammer Kids)という、いたずら好きのこども二人を主人公にしたマンガが開始されましたが、このタイトルもドイツ語由来ですし、また「いたずら好きのこども二人」という設定が19世紀ドイツの絵物語「マックスとモーリッツ」(Max and Moritz - Wikipedia)を受け継いでいます。

 

 ところで最後のコマ、男が hasenpfeffer and cheese と言ってます。英訳すると rabbit pepper and cheese です。ラビットペッパー&チーズ。こっちのほうが「レアビット」より肉料理っぽいでしょうか。でも私は以前ウサギを飼っていたので、ウサギを食べる気にはなれないなあ。