いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと幻惑の間

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 1908年1月19日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 迷子になった三人はこれまでふしぎな体験をさまざましてきましたが、あらかじめ言っておくと、このエピソード以降さらに奇妙なことになってきます。2コマ目に「幻惑の間(Beffudle Hall):危険・立入禁止!」とあるのですが、三人はかまわず中に入っていきます。

 

 ちなみに1コマ目の壁に貼ってあるメッセージにはこう書いてあります...娘の友達リトル・ニモを探し出した者には宝石の冠と魔法のブレスレット、それに9760億ドルを与える。中途半端な数字ではありますが、前より懸賞金が増額されてますかね。署名はモルフェウス王です。

 

 とはいえだれにも見つかる気配のないまま、三人はひどく長い階段に出くわします。3コマ目が上りの階段、4コマ目が下りの階段です。

 

 上りのほうは、フリップが嫌がります。「一段だって上りたくない」そうです。ニモは、上に何があるのか興味はありますが、それでもこの長さの階段には圧倒されています。

 

 そこでニモは下りのほうを行ってみようとフリップに相談します。が、フリップはこれも嫌で、今いる階層にとどまりたいようです。「また上ってこなくちゃならない」と、階段には目もくれません。

 

 次のコマ、ニモたちは巨大な家具のある部屋にやってきます。途方もない長さを体感した直後、途方もない大きさを体験しています。

 

 そしてその直後に、今度は自分たちが巨人になってしまいます。ニモたちの足元には本棚やテーブルや彫像があって、図書室のようですね。図書室という大きな空間でもニモたちは天井に届くほどの大きさだという説明になっています。

 

 それと、図書室で巨人だと、どうしても「巨人の肩の上に立つ」Standing on the shoulders of giants - Wikipedia という比喩を思い浮かべます。本棚に置かれた偉人の彫像たちが、巨人とはいえこどものニモたちを取り囲んでいる(その肩に乗りたがっている?)のがおもしろいです。

 

 3〜6コマ目はどれも日常的でない長さ・大きさの場面で、どれも異なる場所で、しかもこれらが新聞紙面全体に大きく描かれているわけで、読者は一コマ一コマを長々と見て楽しんでいたのではないでしょうか。白黒の小さな4コママンガをスピーディーに読むのとは楽しみ方がちがうと思います。

 

 それにしても巨人のニモ、どうしてこんなに目の影が濃いのか...。唇がわりと肉感的に描かれていて、いつもよりは写実寄りのスタイルになっていますが、ニモの目を写実的に描くのをマッケイは嫌がったんでしょうか。今回のエピソードでいちばん気になるところで、つい視線がそこに行ってしまいます。