いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとさかさま世界

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 1908年2月16日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 一列目の3コマ、大きな曲線が波を打っていまして、ニモたちは一体どこにいるのか一瞬よくわからないんですが、この3コマそれぞれの右上に、四角いタイルが敷き詰められた部分が見えるでしょうか。

 

 二列目になるとこのタイルが大きく描かれるようになります。これは床に敷かれたタイルですね。一方、一列目の波打つ曲線は天井のアーチです。絵本の部屋を抜け出したニモたちは、床と天井が逆さまの部屋にやってきたのでした。

 

 2コマ目のフリップの言葉によると、どうやらまだここは「幻惑の間」らしいです。ニモたちは上の床のほうを目指して(この部屋を出られるドアがあると思っているからです)、まずアーチの端の足場を見つけ、そこから燭台に足をかけ、壁を上っていきます。

 

 7・8コマ目でかれらは、床にくっついている逆さまの椅子の裏側によじのぼり、そのあとテーブルの裏側に進みます。

 

 単にニモたちと部屋の大きさの比較によるだけでなく、建築様式的にも、ここがすごく大きな空間であることに読者はすぐ納得してしまいます。

 

 そしてなんといっても7・8コマ目の椅子とテーブル! ニモたちを支えている逆さまの椅子とテーブルは、それぞれの細い四本足でしか床と接していません...いかにも不安定でこわい! 落ちそう! エピソード冒頭は頑丈な足場でしたが...。

 

 夢オチのニモはベッドから落ちていますが、となると夢のなかでテーブルが落ちてしまったんでしょうか。「落ちる!」と思ったらその瞬間にじっさいに落ち始めるのが夢というものです。