いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットと食べたら死ぬパイ

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 1906年2月22日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 浮浪者と婦人が会話をしています。浮浪者が「この炭にかける塩をくれませんか、腹がへってしまって」というので、婦人は「まあまあ! もっといいものを持ってきましょう」と、なにかパイのようなものを浮浪者に与えます。

 

 浮浪者は「こりゃうまい」ともぐもぐ食べるのですが、4コマ目から様子がおかしくなってきます。「ぎゃあ! 気をつけろ、緑のヒヒが自動ピアノのかげから覗いてるぞ」と、とつぜん意味不明なことを言い出します。

 

 「金を取るなんてできねえ、こっちに来な、タバコをやるからよ! うああ! だれかあそこで歌ってるな、あいつらみんな集まって行くのか」...たぶんそんなことを言っています。婦人は当然のことながら、気が狂った相手を見て驚いています。

 

 浮浪者はその後、わめきながら高く跳ね上がったかと思うと、宙返りして頭を地面に叩きつけ、死んでしまいます...。このエピソード怖すぎます。おそらくパイのなかに幻覚成分が入っていて、浮浪者は脳を蝕まれ、わけもわからぬまま恐怖のうちに死んでいったんですよ、怖すぎるでしょ...。(妄想)

 

 婦人は気が動転したでしょうが、さらに悪いことに、周囲の人たちに「婦人が乞食を殺した」と思われてしまいます。「なにで殴ったんだい?」と聞かれてますね。善意のほどこしがこんな結果になってしまうとは。マッケイの心の闇を見た気持ちです。