いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットとサイラスとミスター・バブル

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 1906年4月26日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 いきなり、作者サイラス(マッケイ)の登場です。左側に立つ男が「えっ、サイラス!」と驚いてます。1906年当時はこんな髪ボサボサだったんでしょうか。1911年の映画「リトル・ニモ」に登場するマッケイはもっと髪が短いですが。

 このままサイラスが今回のエピソードの主題になるのかと思いきや、そうはならず、男が急に「二つ頭のベン・バブルには会ったかい?」と聞いてきます。で、次のコマでそのミスター・バブルが登場です。いわゆるシャム双生児ですね。サーカスやヴォードヴィルに親しんでいたマッケイらしい主題です。

 サイラスは「ぼくのレアビットの夢、すごいでしょ」と自画自賛しますが、どういうわけか、つづけて「どうしてレアビットのスペルを RABBIT じゃなく RAREBIT にしてるの?」と尋ねます。これは、もしかしたら本来はミスター・バブルの台詞なのかもしれませんね。マッケイがまちがえてサイラスの台詞にしてしまったんじゃないかと思います。

 ミスター・バブルの「ふたり」は、「RAREBIT で正しいでしょ」「いやいや RABBIT でしょ」と喧嘩を始め、サイラスが仲裁に入ったところで、サイラスが目を覚まします。仕事中のサイラスでしたが、「レアビットは麻薬よりひどいな...ああ眠い」と、レアビットの食べ過ぎでうまく寝つけなかった様子です。

 最後のコマにはいつものように「SILAS サイラス」の署名があります。このエピソードを描いたマッケイも眠かったのでしょうか。だから台詞の主をまちがえたのかもしれませんね。

(それにしても「ふきだし」という意味の「bubble バブル」の名を持つ人物が現れるエピソードでふきだしのまちがいが起こるというのは...深い意味でもあるのか)