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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドともうすぐ大統領選挙

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 1896年11月1日『ニューヨーク・ジャーナル』の「イエロー・キッド」です。

 

 1896年11月3日の大統領選挙の結果、共和党の候補者ウィリアム・マッキンリーが当選し、第25代アメリカ大統領になります。上のマンガは、その直前に描かれたものです。民主党支持の『ジャーナル』社主ハーストは、どんな思いでこのマンガを見ていたでしょうね。

 

 キャプションは「投票結果を待つマクファデン通りの夜(Receiving the Returns in McFadden's Row on Election Night)」。イエロー・キッドは前景中央で、札束をたんまり手にしています(一部ヤギに食べられてますが)。寝巻きには「ブライアンとマッキンリーに賭けてもうけたお金だよ」と書いてあるので、ブライアンとマッキンリーが勝利したということですね。

 

 ブライアンもマッキンリーも同時に大統領になるわけはないので、これはおそらく、最終的にどっちが勝ったかの賭けではなくもっと細かい賭け、つまり「どこの州ではだれが勝つか」という賭けなんじゃないでしょうか。

 

 アパートのベランダにかけられている板に「両者当選」と大きく書いてあるのはちょっと「ん?」と思いますが、その下には「最新結果によれば両候補者が圧勝。フロリダはマッキンリー、ニューヨークはブライアン」とありますので、イエロー・キッドはそのように賭けたのではなかろうか。

 

 ただ、一方で「両者当選」という言葉は、「両者ともに当選してほしい」という思惑も感じます。イエロー・キッドのうしろに四面プラカードを持っている人がいますが、そこには「ふたりとも当選させて、最後まで戦わせるというのはどうだい?」とあります。

 

 掲載紙の『ジャーナル』が民主党支持であることを考えると、こういうメッセージは、ブライアンがやや不利だったのかなと思わせます。ブライアンが有利だとしたらたぶん、ふたりが拮抗しているとは描かせないんじゃないかなと思うので。まあ、実際に拮抗してはいましたが。

 

 イエロー・キッドに戻って、彼の寝巻きの続きを見てみましょう。「これは金にも銀にもしないよ、赤いペンキと食べ物を買うのさ」だそうです。金と銀は、もちろん、選挙の主要争点である「金銀複本位にすべきかどうか問題」を指しています。

 

 それから赤いペンキですが、英語の「paint the town red(街を赤く塗る)」は「どんちゃん騒ぎをする」という意味になります。文字通り赤く塗るつもりなんですね。アパートの一室が空いているようですが、その部屋はタイミングよくキャンバスがたくさんあるそうです(白髪の老婆のところです)。

 

 ところで、2016年の現在もまたアメリカ大統領選挙が行われているわけですが、イエロー・キッドならだれに投票するでしょうね。当時は移民がどんどん押し寄せ、増加する貧民街を見て富裕層が眉をひそめていた時代で、イエロー・キッドもその貧民街に住むひとりだったわけですので、おそらく、移民を排斥する立候補者を支持することはなかったんじゃないかなあと思いますが。