いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットと自室に戻れない男

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1906年4月28日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

身なりの良い男性が室内を歩いています。「この街は大きすぎるし目まぐるしくて...でも会議がうまくいったのはよかった。ああ、やっと部屋にたどりついた!」と言っていますので、仕事でニューヨークに来ていて、ホテルに戻ってきたところのようです。

ところがこの後、男性が自分の部屋だと思っていたところがことごとく間違っていて、そのたびに怒られます。「おいおいこの野郎!」「とっととうせろ!」と怒鳴られたり、頭から水をかけられたり。7コマ目で姿を見せている女性は今日の会議で同席していた人のようで、ばつが悪い思いもします。

部屋のドアが無数に並べられていて、迷宮っぽい感じが出ていますね。そしてどのドアも線だけで描かれていて、全体的に白っぽい画面になっていますので、主人公男性の帽子や服の黒い色がよく目立ちます。

同様に、13コマ目の黒く塗られた黒人女性キャラも目立ちます。12コマ目から視線をジャンプさせた先にこのコマがあって、黒人女性キャラの絵としてのおもしろさが急に現れるしくみなのかなと思います。これまで逃げ回っていた主人公男性も、このときばかりはこのキャラを見つめてしまいます。

17コマ目、画面右側に蹴飛ばされた主人公は、ベッドから落ちて目が覚めます。「レアビット食べてこの夢見るの3回目だわ...」と言ってます。同じ夢でうなされるというのはよくありますね。コマの下のほうに「SILAS. THANKS TO EMILE PICK」とあるので、エミール・ピックという名の読者の体験談なのかもしれません。