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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドとリズとブルドッグ

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 1897年10月31日『ニューヨーク・ジャーナル』の「イエロー・キッド」です。

 

 イエロー・キッドとリズが追いかけっこしていて、曲がり角にやってきたところからのお話です。6コマすべてがおなじ場所を描いています。木の板をつないでつくった柵が、コマごとにほとんどおなじ配分で描かれていて、まるでコマの枠線が整然と並んでいるようです。

 

 柵には穴があいてあり、穴の向こうは真っ暗でなにも見えません。が、「万事注意、とくに犬には気をつけて」と書かれた看板が柵につけられているので、この穴から犬が出てくるのでしょう(視線をちらっと下に向けると、5コマ目に犬がいます)。

 

 イエロー・キッドは「リズが来るぞ、ちょっと隠れよう」と言いながら、曲がり角までやってきました。向こう側にリズの姿もちいさく見えます。柵の穴のまえに立ったイエロー・キッドは「ボクがここに立ってるのを見たら、リズおどろくぞー」と、見つかりたいような見つかりたくないような感じで、ドキドキしながらリズを待っています。

 

 リズは、なんの苦もなく3コマ目でイエロー・キッドを見つけました。走って逃げていくイエロー・キッドをうしろからずっと見ていたので、柵の陰に隠れたのもわかっていたんだと思う。イエロー・キッドは「リズ、だれかズルいやり方でボクに一杯食わせたな」と言っているから、だれかがイエロー・キッドの居場所をリズにリークしたんだと思っているようですが、そんな人はいません。しいて言えば作者アウトコールトかな。

 

 4コマ目、イエロー・キッドが変な顔でおどろいています。足が宙に浮いていて、寝巻きには「わあ! リズ、ボクは家賃を滞納してるんだよ、いやつまり、その逆なんだ」と妙なことが書いてあります。

 

 原文は I'm behind in my rent or vice versa で、behind と rent を逆にして I'm rent in my behind と変えてやれば、「おしりが破けた」という意味になるのですね。イエロー・キッドはこのとき慌てていて、言いまちがえたんでしょう。家賃を滞納してるというのもありそうな話ですが。

 

 イエロー・キッドが柵のまえから移動すると、柵の穴からブルドッグが顔をだしています。愛嬌のある顔ですね。口には黄色い布をくわえていて、これはイエロー・キッドの服でしょう。イエロー・キッドは「なんとまあ(Hully Gee)」と、お決まりの言葉を口にしています。ただ、あまりおどろいているふうではないです。となりのリズのほうがびっくりしてますね。リズはこのときだけ美少女の顔じゃなくなってる。その他の顔との落差が大きい。

 

 最後のコマは和やかな雰囲気です。イエロー・キッドは「ねえリズ、ボクが家に帰って服を着替えるまでは、大目に見てくれるよね」と、自身の服が破れていることの無礼を許してくれるようお願いしてます。こういうところ、イエロー・キッドはただの悪ガキじゃないなあと感じます。貧民街育ちでいたずらのかぎりを尽くしつつも、愛する女性に対しては大人の礼儀を欠かさない。こう言われては、リズも「しょうがないわね」と返すしかないですよね。