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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドと雪模様

イエロー・キッド

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 1898年1月2日『ニューヨーク・ジャーナル』の「イエロー・キッド」です。

 

 小ぶりな作品ですね。「雪模様」というタイトルがあり、画面の中央に紙が貼ってあります。「ライアンズ・アーケード文学協会はディベートを予定しています。最も難しい問題です、すなわち、金を借りるべきか、それとも返すべきか? 水曜夜」。

 

 おなじ相手からさらに金を借りるべきか、それとも借りるまえに返すべきか、ということなのかな。後者が正解なのは明らかに思えますが...。借りつづけることのメリットはなんだろう。

 

 借りることで、借りた人は生きのびることができ、また(以前に借りた分も含めて)自活のための足場を強固にすることができ、借りた金をいずれ返す可能性が増す、というのがメリットなのかもしれない。返す可能性を残すために借りつづける。

 

 貼紙のしたには、地面すれすれのところに窓があり、いくらか雪に埋もれています。もっと画面手前にくると、雪のうえを歩いたあとがならび、足跡のさき、画面左に老婦人がいます。画面右には黒猫とイエロー・キッドがいて、立ち去る老婦人を見送っているようですね。老婦人は立ち去りながら、顔だけイエロー・キッドのほうを向いています。笑ってはおらず、「やっかいなヤツに会ったな」とか思ってるのかも。

 

 イエロー・キッドはいつものように寝巻きで発話します。「ねえマーフィーさん、もっと雪がふりそうな気配だね」。イエロー・キッドは右手をあげて、親指で空を指しながら、雪模様だと言っています。首にはマフラーをまいて、防寒してますね。裸足ですが。

 

 さて、雪模様であることと、お金を借りる返すの貼紙と、いったいなんの関係があるんだ? と思いますよね。わたしもちょっと考え込んでしまいましたが、snow は「銀貨」をあらわすことがあるそうです。たしかに雪におおわれた景色を銀世界とよぶことがあります。

 

 つまりタイトルの「雪模様(Signs of Snow)」は、「銀貨のサイン」、銀貨をくれというサイン、として読むことができます。イエロー・キッドはマーフィーさんに近づき、「いやあ寒いっスね〜もうすぐ雪になりますよこれは、ところでマーフィーさんちょっとおねがいがあるんスけど、いやねじつはお金に困ってまして、銀貨数枚でいいからちょっと貸してくれるとうれしいな〜なんて(笑)」といったことを今まさに言うところなのではないか。そう考えると、イエロー・キッドの親指が「マーフィーさん...いいね!」と見えてきてしまった。

 

 となりの黒猫の存在も、イエロー・キッドの無心を補強しているように思います。猫とは一般に気まぐれで、なにか物をもらいたいという下心がなければ、こんなふうにマーフィーさんのうしろに近づいてこないと思うんですよ。

 

 というわけで、マーフィーさんの渋い表情の意味がわかりました。やっぱり「やっかいなヤツに会ったな」ということですね。