いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドと牧場

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 1896年7月19日『ニューヨーク・ワールド』の「イエロー・キッド」です。

 

 あれ、イエロー・キッドがいない...と思って探してみると、今回は上のほうにいました。木にのぼっていますね。右手には指揮棒を持って、それにあわせて少年たちが歌っています。左手にはイエロー・キッド自作の詩が書かれています。

 ああたのしいな牧場のくらし

 家の外にはひろがる大地

 花のつぼみを飛びまわる蜂

 歌いましょうみんなともだち

みたいな詩ですね。めちゃくちゃてきとうに訳しましたけれど。原文は、

  Oh-Ho A farmer's life for me

  A home wit naycher wild an free

  Ther budding flower the busy bee

  Are all wis friends O! Hully chee

です。イエロー・キッドでも韻は踏むんですね。

 

 一方、イエロー・キッドの黄色い寝巻きには「詐欺師たちがボクらの帰りを待ってるよ(De green goods men will be waitin fer us when we gits back ter New York)」と書かれています。私は知らなかったのですが、グリーングッズメンというのは19世紀によくあった詐欺師のタイプらしいです(Green goods scam - Wikipedia, the free encyclopedia)。

・「よくできた偽札を買わないか」というビラを田舎にばらまく(真札の原版を盗んでそれで作ったと嘘をついている)

・カモを都会に呼び寄せ、そいつに多額の金(真札)が入ったバッグを見せ、額面よりも安い値段を示して商談をはじめる

・カモが悩んだり気をそらしたりしているときに、共犯者がバッグを別のものにすり替える(それにはおがくずとかが入ってる)

・カモは、バッグの中を見て「だまされた」と思っても、このことを警察に言いづらい(自分が偽札売買に関わったとバレるから)

 

 田園風景の詩を手に持ちながら詐欺師の話もできるのはイエロー・キッドだけ! かどうかはわかりませんが、少なくともイエロー・キッドは話をするための道具(紙、寝巻き)をいくつか持っていて、道具がちがえば内容も全然ちがってていいんだなとわかりました。

 

 その他にも、木から落ちるこどもや、牛のミルクを噴射するこどもなど、みんな楽しそうです。気になるのは画面左下の、1セントで入れるテントですね。めんどりが卵を産むところが見られるそうで、こどもたちが顔をテントにつっこんでます。本当にめんどりならいいんですけどね、中が見えないから何が行われているのかわからない...。