いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモとスーザフォン

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 1906年4月8日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 楽器が大暴れしています。マーチング・バンドでよく見るこの楽器、私は名前を知りませんで、調べましたら「スーザフォン」という名前なんですね。1893年に作られた楽器のようです。このマンガは、楽隊がニモたちをつれて、王様のいる宮殿まで行進する場面です。

 

 タイトルのコマのあらすじを読むと、ニモのお供をしているふたりは、この楽隊が来ることもわかっていたようです。「お供をするポップコーンとキャンディは、この旅の計画を事細かに決めてある(His faithful attendants, Popcorn and Candy, had arranged every detail of the trip)」らしいんです。というか、三角帽子の男の子はリトル・ボンボンっていうんじゃなかったの? まあキャンディだからいいのか...。もうひとりはポップコーンというんですね。

 

 ただ、スーザフォン奏者がなにやら不思議な吹き方をしていて、楽器の管がどんどん長くなっていきます。コマの分割の仕方も、4・3・2・1というふうに、段をひとつ下がるとコマの縦横比が変わっていき、蛇花火のように伸びていくスーザフォンに対応した、横長のコマになります。

 

 スーザフォンがまるで生き物のようですね。⑨のコマはだいぶ高密度に描かれていて、管が何重にもなっているスーザフォンの両サイドを他の楽隊員が取り囲んでいますが、次の⑩のコマでスーザフォンの管が勢いよく伸び、楽隊員が散り散りになって、すごく解放感のあるコマになっています。楽隊の行進はストップしてしまい、ニモたちは立ち往生です。