いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと鍋のなかのフリップたち

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 1907年6月16日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 波打ち際にいるニモたちのシーンからはじまります。画面左上には軍艦がみえていて、ニモたちを迎えにきたのだと思います。お姫さまが「護衛たちが来たわ」というと、ニモも「よかった! ここはちっとも好きじゃないよ」と答えています...すこしは楽しんでいるんだと思っていましたが。

 

 フリップは「こっちには興奮した乗組員がいるぞ! あいつらだれなんだ」と、ニモたちの会話を受けての新情報です。フリップの視線のさきには、去っていく三頭のゾウ(前回、ニモたちをここまでつれてきたのでした)と、それと入れ替わるように近づいてくる三人の島民がみえます。

 

 2コマ目、島民はニモたちとの間合いを一気につめ、手をのばしてニモたちをつかまえようとしています。フリップが「おまえら泳げるか? どうもこいつら、腹がへりすぎてオレをつかまえようとしてるっぽいぞ」といち早く危険を察知します。泳げれば、こちらに向かってくる護衛たちの小舟までたどりつけますからね。

 

 しかし次のコマ、お姫さまが「いそいで! はやく!」と護衛たちに叫びますが、ニモとフリップはとらえられてしまいます。さらにお姫さまもつかまり、島民たちはそれぞれこどもを抱えながら草むらを走っていきます。お姫さまは「助けにきて! 人食いだわ」と顔をおおい、ニモは無言、フリップは「これからディナーだぜ」と肝がすわってる。

 

 護衛たちはどうにか追いついたようです。「いそげ! 姫があぶない!」「姫たちを救わなければ。食べられてしまうぞ」「しかし銃撃すればこどもたちに当たってしまうかもしれない」。腕力ではかなわないから、鉄砲で島民たちを撃退しようとしてるんでしょうか。

 

 6コマ目、ニモたちはひとりひとり、鍋に入れられています。フリップは二回目ですね。島民とこどもたちとの距離が離れたので、これさいわいと護衛たちが銃撃を開始したようです(煙があがっています)。島民たちは大慌てですが、そのなかにひとり、フリップの葉巻を奪って逃げようとしてるのがいて、フリップが「葉巻はおいていけよ! このチンパンジーめ!」と、言っちゃいけないことを言ってるな。

 

 島民たちのからだは、真っ黒に塗りつぶされているのではなく、ところどころ、光が当たっている部分が薄い色になっています。かれらの筋肉の盛り上がりがわかります。ただ、頭頂部にはその薄い色が円形に塗られていて、まるでカッパみたいです。かれらは、これまで登場した島民たちとすこし雰囲気がちがっていて、族長のように英語を話すことはできないし(横断幕は英語ですが)、いきなりニモたちを襲っているし、もしかしたら別の部族なのかもしれません。