レアビットとループ・ザ・ループ
1905年4月19日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。
自動車ですね。女性が運転しているようです(右ハンドルなのか)。となりに男性が乗っています。
女性によると「わたしがループ・ザ・ループ好きだって知ってる? やったことあるかしら? わたしはサーカスで大喜びで演じてるわ」らしいです。彼女は曲芸師で、ループ・ザ・ループなる演目を行っているんですね。
「ループ・ザ・ループ」というのは宙返りという意味ですが、当時ニューヨークの遊園地では、この名前のジェットコースターが人気を博していました(写真はこちら→[Loop the loop, Luna Park, Coney Island])。明らかにこれがネタになってます。
となりに乗る男性は「本当にあれが好きなのかい? わたしは好きになれそうにないが」と、ループ・ザ・ループ否定派のようですね。しかし女性は2コマ目で、わくわくしながら「ちょっとだけキツいのいってみようか(a little death dipping)」と言い、スピードを上げていきます。車はいつのまにか、ジェットコースターのレールのような道路を走っています。
男性は「君がそういうなら」と渋々乗っていますが、やはり早くも3コマ目で「降ろしてほしい」と願い出ます。たしかに、もう道の途中が切れていて、すでにヤバい感じはありますね。で、4コマ目で急勾配の螺旋を下るときには「やめろ! やめてくれ!」と絶叫です。
女性はぜんぜん平気で、男性に「なにごとも思い切ってやってみるべきよ」と声をかけるのですが、男性は「こういうのは思い切れない、死にたくない」と聞く耳を持ちません。その後、コースは徐々に錯綜してきて、男性はもはや理性を保てず「おまえ女じゃなかったら殺してるとこだぞ!」と罵倒してます。
作者のマッケイは自動車嫌いだったそうです。映画「恐竜ガーティ」では自動車に乗ってましたけど、もしかしたらそれも嫌だったのかもしれないですね。ふつうの道路を走っているのだとしても、めまいがして上のマンガのように道がグニャグニャに見えていた、とか。