いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

レアビットと入れ歯

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 1906年1月18日『ニューヨーク・イブニング・テレグラム』の「レアビット狂の夢」です。

 

 あいかわらず「レアビット」は、各行の統一性というか連続性がはっきりあるなあという印象です。1〜4コマ目は男のスーツの黒が、また5〜8コマ目は氷面に生じた穴が、それぞれの行に視覚的な連続性を与えています。加えて背景の線も連続性を強調してますね。

 

 この男性はひとりでスケートしていて、「婚約者の彼女と一緒に来たかったなあ」と言っています。それは実は10コマ目で姿を現す女性なのですが、それについては後述。

 

 男性は寒いのでくしゃみをするのですが、なんと3コマ目で入れ歯を穴に落としてしまいます。その形からして一本や二本じゃないですね。

 

 男性は、だれもこちらを見ていないことを確認してから、服を脱いで水中に潜ります。「歯がないまま明日の結婚式に出るなんてありえない」「これで彼女に会うなら死んだほうがマシ」と、水に沈んだ入れ歯を取り戻すまで何度も潜ります。

 

 そこにこどもが現れます。いわく、「あ!お姉ちゃんの彼氏の服だ!お姉ちゃんに教えなきゃ!」...フィアンセもこのリンクに来ていたのですね。それで11コマ目、彼女の前に、下着姿の歯のない彼氏が水中から登場する。

 

 歯がないし、寒いし、濡れてるわけですから、人相ぜったい変わってると思います。男性は、いちばん見られたくない姿を、いちばん見られたくない人に見られてしまって、まったくイヤな夢ですね。夢からさめた男性も入れ歯なんでしょうかね。