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いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと柱廊の巨人

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 1907年9月8日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 4コマ目以降、立ちならぶ柱がだんだんと木々に変化していく様子が大胆に示されています。まずはその前段階をみていきましょう。

 

 ニモたちはモルフェウス王に会うためにこの宮殿へやってきたわけですが、いつもいつもジャングル・インプがじゃまをして、なかなか会うことができません。前回はジャングル・インプが部屋の照明を消してしまい、あたりがなにも見えなくなったのでした。

 

 今回の冒頭では、もはや王様の姿はありません。ジャングル・インプの教育係であるフリップは「彼女をお父さんに会わせてやってくれよ、おれらは外にいるからさ」と、責任を感じているような発言です。ニモも同調し、「そうだね、戻ってくるまで、ぼくたち外で待ってます」とキャンディに告げています。

 

 ドクター・ピルはお姫さまをエスコートします。「泣かないでくださいませ」。お姫さまは「パパに会いたいのに...」と顔をおおっていますね。あの強気なお姫さまが泣いてしまうとは。苛立ちや悲しみが頂点に達してしまったんでしょう。

 

 そんなわけで、お姫さまとドクター・ピルは退場します。キャンディも「すぐ戻るから着替えておいて!」とニモに言い残し立ち去ります。かわりに、ニモたちの前には背の高いひとがやってきて「こちらです、舞踏会用の服に着替えてください」と話しています。

 

 3コマ目、さっそく着替えました。ピエロのような服で、正装とは思えませんね。フリップも「これが舞踏会用の服なのかよ」と怪訝そうで、ジャングル・インプも笑ってます(かれは着替えないのか)。

 

 着替えを用意していた背の高い男は「あちらの柱廊でお待ちください、迷子にならないように!」とニモたちに伝え、着替えたニモたちは言われるまま柱廊にやってきます。それが4コマ目ですね。

 

 フリップは「この柱は黄金か、それともただの真鍮かな」と、柱が何でできているかを考えられる余裕がありますが、ニモは「わかんないけど、ここはすぐに迷子になりそうだね」と不安げです。たしかに、ニモたちが見上げているあたりは縦線が密集していて、柱と柱の境目がわかりにくくなっています。空間把握がやりにくい場所ですね。

 

 「迷子! ねえよ! 行ってみようぜ」「むこうでお姫さまを待つよう言われてるよ、戻ろうよ」。フリップが画面右にどんどん進もうとするのを、ニモが止めようとします。5コマ目は4コマ目とくらべて、色合いがすこし青みがかっています。また柱の線が直線ではなく、がさがさ揺れています。床には短い縦線がたくさん描かれていて、草のようですね。ジャングル・インプだけがそれに気づいています。

 

 6コマ目になるとさらに青みを増し、柱には茶色の筋が描かれています。木々になってきました。フリップはなおも「行こうぜ、すぐに戻れるさ、怖じ気づくなよ!」と、べつの場所に行こうとしていますが、ニモは「これ以上遠くには行けないよ、戻ろうよ」と怖がりはじめています。

 

 ジャングル・インプは柱の根元をなでていますね。景色の変化をさわって確かめようとしているのか。この景色の変化は、ニモの不安が引き起こした幻覚であるわけではなく、客観的に起こっている現実なのだということが、ジャングル・インプのしぐさによってわかります。

 

 7コマ目、赤い肌の巨人があらわれました。「ぼく帰る! なんかやってくるよ!」。ニモは一目散に画面左に走っていきます。フリップは「どうしたんだ、なにも来てねえよ」と言っていますが、ジャングル・インプも驚いていますので、やはりこの巨人たちは実際にここにいるようですね。この森に棲んでいるんでしょうかね。こんなに木が密集している場所に、いづらくないのかな。

 

 ところで、これ以降「リトル・ニモ」の物語は、ニモとフリップとジャングル・インプの三人がメイン・キャラクターとなります。お姫さまにかわってジャングル・インプがレギュラーになるわけです。大変なことですね。これまでは、お姫さまがリーダーシップを発揮して厄介ごとを避けようとしていましたが、そのブレーキ役のお姫さまにかわりアクセル役のジャングル・インプが入ってくるのですから。三人の少年の珍道中が楽しみです。