いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと夜明けの番人

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 1906年3月11日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 これまで各コマの下にあった説明文が、書かれなくなりました。タイトルのコマの左下と右下に、このエピソードのあらすじが書かれているだけですね。前回のお話をおさらいする文章ならわかるのですが、このお話のあらすじを最初のコマに全部書いてしまうのは、ちょっと変な感じがします。

 

 前回はフリップという悪党の初登場でした。フリップはニモを目覚めさせる力を持っていて、ニモがフリップを見てしまうとそこで夢が終わるしかけになっています。そこで今回は、ニモがフリップを見ないように、眠りの国の人々がニモに目かくしをさせています。

 

 フリップはなんとかニモの邪魔をしようとして、馬で先回りしたりしますが、ニモの護衛から「そんな老いぼれに乗ってどうするつもりだ」と笑われてしまいます。老いぼれ馬はビネガー飲んで頑張ってるんですけれども。

 

 そこでフリップは奥の手である、おじさんの「夜明けの番人(Dawn Guard)」の力を借りることにしました。おじさんは「おまえはいっつもトラブルばかりだ...まあいい、私の力を見せてやろう」と言って、次のコマでド派手に太陽を上らせます。

 

 フリップがいなくなって油断していたのか、ニモはもう目かくしをとっていました。だから別におじさんの力がなくともフリップはニモを目覚めさせることができたように思いますが、それはそれとして、このコマはすごいですね。ニモを除くすべての物の輪郭線が、黒ではなく青になっています。影も青いですね。それまでのコマの色調が全体的に暗い感じだったので、このコマが実際にまぶしく感じるし、読者は自分で勝手に、眠りの国が溶けて消えていくのを想像するのではないでしょうか。