いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと人魚たち

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 1906年8月26日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 ニモはお姫さまといっしょに海水浴中で、前回のお話で人魚たちに出会いました。前回は、人魚たちは海面から顔と尾びれが現われているだけでしたが、今回さっそく全身を読者に見せてくれています。しかしおっぱいはどうなっているのか...ないの? え、ないの?

 

 さて、フリップ登場です。以前、竜の口のなかに閉じ込められてしまいましたが、無事に出てこれたんですね。しかもすでに水着姿です。葉巻は欠かしません。「おれを欺こうったってそうはいかないぜ」と、フリップが水面を走ってくるのを見た人魚たちは「わたしたちの水中サーカスをじゃまするつもりかしら? そんなことしたらこらしめてやるわ」と、けっこう勝ち気なことを言っています。

 

 彼女らはサーカスをするつもりだったんですね。水族館のイルカショー的なものでしょうか。前回、浜辺にアクロバット芸人たちがいたので、もしかしたら人魚も見世物をするのかなとは思っていました。P・T・バーナムの不気味な「フィジー人魚」(Fiji mermaid - Wikipedia, the free encyclopedia)は、ここにはいないみたいです。

 

 2コマ目、ニモが人魚(merboy)になっています。いちばん右の人魚が「王の名において、ニモを人魚に変えます」と唱えていて、それがさっそく効いていますね。ついでにお姫さまも人魚になりました。

 

 3コマ目でフリップが東屋に到着しますが、人魚たちは海のなかに潜り始めます。ニモは「ぼくの足はどうなったの?」と不安ですが、人魚たちは「足はもとに戻るわ」「心配しないで」と言って、ニモを海のなかにつれていきます。

 

 それで人魚がなにをするかというと、海のなかからフリップの足をつかんで、フリップを引きずり込むという作戦に出ます。フリップは葉巻をくわえたまま海に沈められてしまいました。4・5コマ目でお姫さまが「フリップを脅かしてやるのよ」「これでもうフリップはじゃましないわ」と言っていることとか、5コマ目の「一安心」な表情とか、ちょっと怖いですよねこのお姫さま。ニモは、沈められているフリップを見て驚愕しています。

 

 6コマ目では、人魚たちがフリップを巨大ザリガニみたいなのとむりやりご対面させています。口を開けたザリガニにフリップの足を差し出しているようにも見えます。たまらずニモは「いくらなんでもやりすぎだよ!」とわめきちらします。フリップは助かるんでしょうか。ひとまず夢はここで終わりです。

 

 人魚が人を海の中に引きずり込む、といえば、やはりギリシャ神話のセイレーンを思い浮かべます。セイレーンは鳥っぽいので人魚とはちょっと姿形がちがいますが、海難を招く美女という点で似てます。古来、人魚はファンタジーに欠かせない生き物で、洋の東西のいろいろな人魚イメージ、人魚伝説があり、そういうのをひとつひとつ見ていくのは楽しいです。