いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

リトル・ニモと教育係フリップ

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 1907年7月28日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。

 

 やや俯瞰的な構図ですね。1コマ目、中央にジャングル・インプ、フリップ、船長、お姫さま、ニモがいて、画面左に海兵たちが、右にはサマー・パレスのひとたちが立っています。

 

 フリップはジャングル・インプに「紳士だ! 紳士になるんだぞ! わかったか?」と諭しています。前回フリップはジャングル・インプにいたずらをされて怒ってました。いまはどうやら落ちつきを取り戻し、今回はうまくやれよと教えているわけです。フリップが教育係という設定がすでに笑いを準備していると思います。

 

 船長は「それでは失礼します」とお姫さまに頭を下げ、お姫さまも「ニモもわたしも助かりました」と礼を述べています。

 

 次のコマでは不遜なフリップさえも「じゃあな船長! あとで勲章を贈るからよ」といいながら頭を下げてます。フリップはジャングル・インプの教育係ですので、こうやって紳士のふるまいを教えてやっているんですね。

 

 ところがジャングル・インプは、おじぎをするフリップのうしろに近づき、3コマ目でフリップのおしりをけとばします。うしろでお姫さまの「早く行かないと、パパが待ってるわ」という声がするなか、フリップはおじぎの格好のまま、海へ落下します。

 

 1コマ目は紙面の端から端まである横長のもので、場面の全景を説明していますが、二段目は、船長、フリップ、ジャングル・インプの三人に的をしぼった二コマです。3コマ目で船が岸から遠ざかっているのがわかり、視線が横に流れますね。

 

 三段目になるとコマが三つになり、コマのなかで視線を動かすスペースが狭まり、よけいにフリップに注目させられます。といってもフリップは5コマ目から水のなかにいて見えませんが。船長は「おい! フックをもってこい! 急げ!」と海兵たちに声をかけ、ジャングル・インプのうしろからは、お姫さまでしょうか、「どうして遅れてるの? もう!」という声が聞こえます。

 

 「このへんにいるはずだ」という船長の声をもとに、海兵たちがフックのついた棒で海のなかを探ります。お姫さまは、岸の端に追いつめられたジャングル・インプに対して「こんな急いでるときにあなた何やってるのよ?」とお怒りですね。さすがのジャングル・インプも「やっべえ」といった面持ち。

 

 「とにかく泡の出てるところだ」「よし! とらえたぞ!」という海兵たちの声のなか、みなが水面を見つめています。ニモもたぶん地面にひざをついて海をのぞきこんでいますね。お姫さまはジャングル・インプといっしょにいたくないようで、「フリップは、このいたずらっ子をつれていっしょにくるべきじゃないわよ」といってます。なんでこうも面倒が起こるのよ! というお姫さまの気持ちはよくわかる。

 

 8コマ目、フリップは無事に助け出されました。船長はさっそく「あの子はわたしたちがジャングルへつれて帰ります」というのですが、フリップはどうしたわけか「いや! ダメだ! オレがあいつをつれていく。しつけはオレにまかせてくれ!」と、ジャングル・インプの教育係を続行するつもりです。なぜなんだ。トラブルメーカーがいてくれるのは物語的にはおもしろいですが。

 

 お姫さまはイライラしつつ「さあ、宮殿へ行くわよ」と歩きはじめています。その先にはひさびさのリトル・キャンディ(だっけ? 名前忘れた)がいますね。「フリップもいっしょにジャングルへ行けばいいのに」と厳しい意見です。

 

 ニモは、救助されたフリップのからだを支えていますが、夢からさめると自分の枕を持っていました。ベッドから落ちたんですね。ママは「ベッドにもどりなさい!」とイライラしていて、ここにも夢との連続性があります。