いたずらフィガロ

むかしのアメリカのマンガについて。

イエロー・キッドとゴルフ(コミック・ストリップ)

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 1897年10月24日『ニューヨーク・ジャーナル』の「イエロー・キッド」です。

 

 コミック・ストリップですね。テーマはゴルフです。ゴルフは以前にもやってました(イエロー・キッドとゴルフ - いたずらフィガロ)。そのときのゴルフは痛々しい場面がいくつもありましたが、はたして今回はどうか。

 

 「ボクがこのゲームをやるよ、ズルして助けてくれるヤツとかいらないから」と、イエロー・キッドがリズたちに話しかけています。寝巻きだけでなく帽子やクラブ、それにボールも黄色です。まんなかに立つイエロー・キッドのうしろには、黒猫と、ピンク色の服を着た黒人の女の子がいます。彼女はこれまでのマンガのなかにも群衆のひとりとしていましたが、今回は数少ない登場人物のひとりに抜擢されました。

 

 コマの左端にはリズが、右端にはテレンスが立ち、リズとイエロー・キッドのあいだにオウムがとまっています。「やってみろよ、できると思えないけど」と、イエロー・キッドを刺激してますね。

 

 2コマ目では、黒猫がフレームから飛び出して、ゴルフボールで遊んでいます。イエロー・キッドが足下に止めておいたボールを、猫がかってに奪ってしまったのでしょう。オウムは「いいショットだね」と反応し、イエロー・キッドや他のこどもたちも笑っています。イエロー・キッドは猫を追いかけます。「こいつめ、じゃましようとしてるな、待てコラ」。

 

 この2コマ目の黒猫は、マンガ全体のちょうど中央にいて、しかもフレームを飛び出しているので、そうとう目立っています。こころなしか、他のコマの黒猫よりも、黒が濃い感じもする。黒猫の躍動感がこのエピソードの裏テーマという感があります。

 

 コマの枠線があると、キャラクターはそれをまたぐことができる(引かれていない線はまたげないので)。キャラクターに線をまたがせることで得られるのは、キャラクターがあばれまわる空間の奥行き感を強調する効果かなと。コマの内部に見事な透視図法を用いて三次元のイリュージョンをつくる方法もありますが、コマの枠線を飛び越えさせることでも、簡単な奥行きを生み出せます。

 

 さて、イエロー・キッドは猫からボールを取り返し、3コマ目でボールを所定の位置に置くところです。クラブの先がオウムをぐりぐりと押していて、さっきバカにされたことの仕返しでしょうか。オウムは「助けて助けて」とわめいていますが、だれも助けようとしません。というか気づいていないのかも。リズがどこを向いているのか、ちょっとわからない。

 

 下三つのコマでは惨劇が描かれています。イエロー・キッドがふりあげたクラブは、まず黒人少女の頭をたたき、次いでリズの頭を打ち、最後は、ボールがテレンスの顔を痛打します。イエロー・キッドは読者のほうを向きながら、寝巻きで「いち、にの、さん」としゃべっています。

 

 まあ、ショットのときにこんなに近くにいたんじゃ、そりゃみんなぶつかりますよね。コマが小さいのに三人もなかにいたんじゃダメですよ。ゴルフは広いところでやらなければね。黒猫やオウムはコマの外に出られたようで、なんとか無事でした。