リトル・ニモとフリップの取り替え
1906年3月18日『ニューヨーク・ヘラルド』の「眠りの国のリトル・ニモ」です。
今回も、前回の話の続きです。ニモは、フリップを見てしまうと目が覚めてしまうし、夜明けの番人が太陽を上らせることによっても夢から覚めてしまいます。
なかなかプリンセスのところに行けないので、眠りの国の人々は、タイトルのコマでお月さまに相談しています(それにしても彼らは何に座っているのか)。するとお月さまは「ニモとフリップにお互いの格好をさせて、夜明けの番人がニモに気づかないようにさせるというのはどうか」と助言します。
そこで、眠りの国の人々は、ニモにフリップの格好をさせ、フリップにはニモの格好をさせます。フリップは「これでお姫さまに会えるぜ!」と意気揚揚で、これがたくらみであるとはまったく気づいていません。変装したフリップは全身が緑色でカッパのようだ...。
ニモはフリップの変装をして、宮殿内を歩いていきます。途中、夜明けの番人に遭遇しますが、彼はまったくニモに気づきません。「ようフリップ!ついにお姫さまに会えるのか」とか言って、のんきに座っています。
ところが次の、いちばん下の大きなコマで、ニモは鏡を見てしまいます。鏡に映る自分の姿が、いまはフリップの姿というわけで、ニモはフリップを見たことになり、そこで夢は終わりです。フリップの格好を見ただけでも目覚めてしまうとは、フリップの力はすごいですね。ニモにとってフリップは、これ以上夢を見ていたら死んでしまうから夢を強制的にシャットダウンさせるしかない、というくらいの、命の危険に関わるものなのでしょうか。
ニモのその決定的な瞬間が画面の右端に描かれていて、ちょっと気づきにくいのですが、このコマの左端にはおかしな部分があります。全身に星の模様がちりばめられた黒い服の男、彼は、どこに立っているのか。ここは、わたしには、スロープが下に続いていく空間のように見えるのですが、だとすると彼は空中に浮いているのでしょうか。
すぐ手前で「来るんだニモ」と言ってる緑の服の人は、スロープに立っていますよねきっと。だから黒い服の人だけおかしい感じがします。ニモはまもなく目覚めてしまうわけで、この世界の崩壊がここからはじまる、ということなのか...。